行間を読み取る、それがオタクのスキルだ。
'textual poaching' (テクスチュアル・ポーチング)という言葉をご存知でしょうか。
元々はフランスの社会学者、ミシェル・サルトーによって編み出され、のちにアメリカ人社会科学者であるヘンリー・ジェンキンスによってファン・カルチャー(オタク文化)を研究する際に用いられた概念です。
と小難しい話から始めてしまいましたが、聞き覚えがなくてもまっっっっっっっったく問題ございません。私も大学院の授業で扱って初めて知りましたから。
で、この言葉の定義は何かといいますと、
「テクストの支配的意味を超越した意味を作り出す、読者による読み方」
になります。
…はあ?ってなりますよね。でもこれ、2次創作やっちゃう系オタクの方なら身近すぎて、わざわざこんな小難しい表現をするほどのものではないんです。
要するに、登場人物の基本設定は守りつつ、描かれてない内容を勝手に想像しちゃうことを指しているんです。
例えば、『シティーハンター』に登場する冴羽獠と槇村香のくっつきそうでくっつかない関係にモヤモヤして、二人がめでたく付き合った時のことを想像したことのある方はいませんか?(たとえが古いとか言わないでください)
または、作中に全く恋愛描写はない登場人物同士が恋仲になったら・・・という”ifの世界”を空想する傾向にある方はいませんか?
それこそが’textual poaching'です!(もしも私が勘違いしてるだけだったらどうしよう、本気で気になる方はググってくださいね・・・)
日本における研究がどうなっているのかは私は勉強不足でよくわからないのですが、少なくとも欧米のメディア研究においては、この概念はきちんと研究されています。
そう、すなわちオタクたちによる2次創作文化にはしっかりと光が当てられ、立派な研究対象として見なされているのです!
某イラストコミュニケーションサイトを頻繁に利用される方なら、時折外国のユーザーに出会うなどしてすでにご存知かもしれませんが、作品を超越した世界を描く行為自体は、日本のオタク特有のものではありません。
そう、
2次創作 is ワールドワイド
世界に広がる文化の1つなのです。
そう思うとなんかすごいことやってるような気がしてきませんか?
(多分人によりますね、はい)
もちろん、作品の世界を壊している、という理由で2次創作自体をよしとしない人は大勢いらっしゃいます。また、Aさんの作品ではxとyが付き合ってるのにBさんの創作ではyとzがデキてる、そしてBさんにとってAさんの組み合わせは地雷、なんてこともありえます。非常にデリケートな行為です。
ただ、私が個人的に2次創作に対して思うのは、それらは元の作品や登場人物への愛そのものであるということです。
2次創作者たちは自身の想像力と表現力をフル活用し、それぞれの形で作品愛を表出しているのです。
その土台にある「作品で描かれていない行間を読み取るスキル」こそ、作品・人物を愛してやまないオタクたちに宿る、一種の才能だといえるでしょう。
とはいえ、2次創作や同人活動はグレーな部分もある繊細なものであることに違いはないので、みなさまマナーを守って楽しんでいただければと思います。
その上で、今日もほとばしる熱い想いを糧に、各種活動に勤しんでいただければ幸いです。
想像力豊かなオタクたちのみに与えられしこの才能を享受できる世界に乾杯!
そして全てのオタクたちに幸あれ!(誰だよ)